白岩吉明オフィシャルサイト、山岳写真ネットギャラリー、「内陸アジアの貌・フンザ物語・横断山脈・ウイグルの瞳」「エヴェレスト街道」「チベットのヒマラヤ」「ランタン谷」「黙示録」「

 

 
 
 
 
 

ランタン谷:6

 

 爛漫の石楠花の古木が繁茂するゴラタベラからランタン村へ至るランタン・コーラ沿いの南斜面、標高は3700m。桃源郷を彷彿させる穏やかな環境が辺りを包む。母は歌を口ずさみ、幼な子は棒を振り振り右え左えと飛び回る。風の無い午後、陽射しが眩しい。所が、ものの30分で空は急変だ、雷鳴が地面をゆすり、ヒョウが降り、暗闇が辺りを包み、雨が降り、雪も降る急変ぶりだ。景色に似合わず気象は凶暴だ。この凶暴で暴力的な気象が神々しい姿に山を化粧する。矛盾に満ちた世界だ。この矛盾こそが桃源郷の条件だ。
 

 

 彼女たちは足が速い、兎に角速い、視界の入り撮影の許可を得るにはこちらも走らなくてはならない、標高3800m~4000mで機材を抱えての競歩は目が回る。撮れても大半はブレて作品にならない。

 

 道には人々の安全を祈願してのチョルテン(仏塔)とメンダン(マニ石の長い石壁)が続く、石にはオン・マニ・ぺメ・フムの多彩なマントラ(真言)が彫られ一つとして同じものは無い。仏塔を挟み道は右左に在り、仏教は左側を通行し、仏教以前から有る土着信仰のボン教は右側を歩く。仏塔を回る時は仏教は時計回り、ボン教はその反対の反時計回りで歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 ランタン谷を埋める爛漫の石楠花を無造作に並べて見た、それぞれに個性があり野生的だ。植生の環境も多彩だ。此の多様性はランタン谷の石楠花の特徴と言えるかも知れない。意味する処は環境の多様性だろう、標高差・土壌の変化・日照差に太古を思わせる原生林の現存が考えられる。特に秘境に相応しい原生林は見事なものだ、高山性原生林は貴重な存在だ。然し今回の地震に依る山体崩壊は、之等に壊滅的破壊を加えた事だろう。山岳写真の撮影で入ったランタンヒマールであったが、2次的撮影のスナップ写真が、編集が進むにつれ主役の様相を呈して来た、山岳写真の弱さを思い知らされた1幕だ。此処の記録は貴重なものと思う。Net空間で之を世界に発信し、然も高画質で余す処無く伝える作業は、アマチュアだからのものだ。「プロ」は著作権が絡み、金額が絡み、気前の良い発信は躊躇するだろう。Net空間はアマチュアの独壇場だ。下図はヒマラヤの石楠花の分布図だ。

 

 下図面の出典:Rene de Milleville   The Rhododendrons of Nepal : Himal Books

 過ってこの世に存在した桃源郷の記録を此処に残す。桃源郷の話は知識の世界であり夢物語として認識していた。

工業製品に埋もれた消費社会とは距離を置いた、内陸アジアの自然と人間を紹介いたします。此処には、私たちの美意識の源泉・文化の源泉が数多く現存し、自分が知らない事に驚きます。此処には有史以前から今も変わらない人跡未踏の雪山や氷河、0m地帯の広大な砂漠や標高5000mの草原、アジアの大河の源、幾百千年来の隠れ里等など、枚挙に暇の無い非日常が今も生きています。大地と太陽・水と植物・自然の恵みを友に、人口エネルギー消費ゼロで暮らす人々も沢山います。この地域の総面積は日本の国土の20数倍・北米の面積にも相当し、此の地の地下資源を世界は注視してます。近い将来の「地下資源&エネルギー」枯渇時に、工業生産國は衰退・崩壊する「現代文明の病理」を背負ってますが、内陸アジアは背負ってません。この問題は最終章「黙示録」で考察してます。内陸アジアには持続可能な社会の雛型が有史前から連綿と続いています。
 

 
 
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