白岩吉明オフィシャルサイト、山岳写真ネットギャラリー、「内陸アジアの貌・フンザ物語・横断山脈・ウイグルの瞳」「エヴェレスト街道」「チベットのヒマラヤ」「ランタン谷」「黙示録」「

 

 
 
 
 
 

チベットのヒマラヤ:1

 シシャパンマ(8013m) 標高5000mのシシャパンマBCより撮影。南から北へ走るレンズ雲が2段重ねになった瞬間を捉えた。山の南でレンズ雲は生まれ、雲は時速100Km程の高速で北へ流れシシャパンマを通過して行く。レンズ雲は数時間に渡り次々に生まれ、不思議な光景が雲の数毎に展開した。

 

 

 ポーロンリ(7292m) シシャパンマの北に並ぶ。台地の苔が草紅葉に燃え、山肌の純白を飾る。

 

 

 シシャパンマBC(標高5000m)~ぺク・ツォ湖(標高4600m)間に広がる草原を走る野生馬の群れ。此処は自然保護区の無人地帯(極少数の遊牧民は別として)。規模はざっと110Kmx80Kmの広さで関東平野に匹敵する。

 

 

 ぺクツォ湖畔に佇む遊牧民の夏季テント。夏雲が鶴翼を広げ地平を舞う。標高は4600m。

 

 

 ラルン・ラ峠からテンリ―への公路沿いで見かけた山裾の大規模集落。絵になる光景だ。標高は4500m。

 

 

 チベットは山の数が世界で1番多い、その数は誰にも分からない。下記図1は(チベットのヒマラヤ・全23巻)の地理的位置の紹介だ。上に広域図、下に詳細図(チベット自治区の1/20の面積)を Google Earth を用いて示した。チベットに付いて一言。此の地は地球上で特異な位置に存在する、特異性の第一は高標高・低緯度だ。この特異が生命に不可欠の真水を造る。チベット全域の地面下は永久凍土だ。乾燥した台地の下は氷=真水だ。太陽光に炙られたインド洋の海水は気流と成り此の地で冷え雪となり真水を生む。地球が保持する真水は南極・北極・チベットの氷が主だ。チベットは第三の極とも言われる。余談乍ら真水は地球の水の2.5% だ。水の97.5%は海水だ。ヒマラヤ山脈の氷河は水流となり、台地を削り、複雑な地形を生み、気まぐれな河や湖を育て、多くを地下に眠らせる。チベットは天空の貯水池だ。永久凍土の貯水池だ。話は飛ぶ、チベットは天が近く、地平線が広く、1日の中に四季があり(夜は冬、午前は春、昼は夏、夕方は秋)真夏でも雪が降る。気象の喜怒哀楽は激烈だ。チベット密教の曼荼羅絵は之を見事に表現している。環境が人々の哲理を生むのだ。風景にはリアリズム(現実)とシュルレアリズム(超現実)が同居している。日常が天界と調和し、生きる事を飽きさせない。植生も異界に相応しい姿で命を誇示している。人々の顔貌はそれ以上に個性豊かだ、文明と云う画一とは真逆だ。広いチベットは山岳を舞台ごとに演出し様々な姿を見せてくれる。此処では山岳が主役だ、主役を知る為に、チベットと言う舞台を広く見る事とした。山岳写真ネットギャラリーの眼目は此処に在る。此のギャラリーでは無機物と有機物(風景と生命)の境界に曼荼羅絵を配した。曼荼羅絵は文革の破壊を免れた都市部の古寺から採取したものを用いた。曼荼羅絵には幾世紀も生き抜いた生命力がある、引き換え、ここの写真は線香花火に等しい、現代文明は消費に依存しゴミを生産している、写真文化も相似形と言えるだろう。話は飛ぶ。此の地でも消費依存が加速している、消費の加速は文明の明を暗に転じ兼ねない、核の闇が象徴だ。下図2段目の上部に走る新蔵公路300km分はトヨタのランクルで走行した、この時は5日を要した、朝早くから夜まで走り5日を要した。この道は2008年の北京オリンピックを境に高速道路化され、今は5日を要したのが嘘の様に半日もかからない。掲載の写真は、何れも道とは言えない難路をホフク前進したが故の、困難からの賜りものだ。新蔵公路の高速道路化は、北京政府の一帯一路政策に、チベットを巻き込むものだ。消費社会にチベットを組み込むのは罪だ。消費は汚染を伴う。新蔵公路はカラコルム・ハイウエイに接続しインド洋に出られる戦略道路に進化を続ける。尾瀬沼を高速道路が走り、タンクローリー車やダンプ・カーや軍用車両が黒煙を撒いて四六時中疾走する様なものだ。チベット全域を覆う地下滞水・凍土帯は一度汚染されたら戻らない。此処に掲載の23巻は時間軸が僅か前のチベットへのノスタルジーでありレクイエムだ。此の地の現政権は文革でチベット文化を徹底的に破壊し、今も継続している。今は一帯一路政策で環境破壊を加速化している。20世紀も21世紀もチベットは自然も人も近代文明の犠牲者だ。傷つき乍らもチベットに息つく太古のままの自然を、ささやかながら此処に残す。自然を見る目と権力を見る目の目線は揃えたい。

 

 

 

 

 

 

 ラルン・ラ峠(標高5000m)からの眺望、標高5200m程のコブ山が連なる、白銀の山並みはラプチカン(7367m)山群。

 

 

 

 ジュガール・ヒマール西北端に見られる断層帯、流れの先はペクツォ湖。

 

 

 

 

  標高5000mの砂礫に生きる植物。此の生命体が地表に生々しい姿を見せるのは極く短期間だ。多くの時間は地下に深く潜る根を命として生きる。

 

 

 

 

 8月初旬の朝、夜半の雪が地表に薄く残る中、羊達はせっせと地衣植物を食む。此処は夏の放牧地、台地を傷めない様に放牧は常に移動する。

 

 

工業製品に埋もれた消費社会とは距離を置いた、内陸アジアの自然と人間を紹介いたします。此処には、私たちの美意識の源泉・文化の源泉が数多く現存し、自分が知らない事に驚きます。此処には有史以前から今も変わらない人跡未踏の雪山や氷河、0m地帯の広大な砂漠や標高5000mの草原、アジアの大河の源、幾百千年来の隠れ里等など、枚挙に暇の無い非日常が今も生きています。大地と太陽・水と植物・自然の恵みを友に、人口エネルギー消費ゼロで暮らす人々も沢山います。この地域の総面積は日本の国土の20数倍・北米の面積にも相当し、此の地の地下資源を世界は注視してます。近い将来の「地下資源&エネルギー」枯渇時に、工業生産國は衰退・崩壊する「現代文明の病理」を背負ってますが、内陸アジアは背負ってません。この問題は最終章「黙示録」で考察してます。内陸アジアには持続可能な社会の雛型が有史前から連綿と続いています。
 

 
 
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