エヴェレスト街道をカラパテールに向け高度を上げて行く途中、ぺリチェ手前で街道を逸れ、イムジャ氷河に入る。イムジャ氷河の入り口に在るのがディンボチェの村だ。エヴェレスト街道のトレッキングでは、この村から高所順応の為にイムジャ氷河のロッジエリアであるチュクンに入る。チュクンの標高はおおよそ4700mだ、此処では農耕は出来ない。チュクンの南東面の様子を上図に描いた。此の地の氷河はモレーン(氷河堆積物)に埋もれ地表面は黒い。チュクンの奥には此の地の山、イムジャ ツェ(6160m)があり、山裾にはイムジャ氷河湖がある、この湖の水深は100m以上だ。氷河の厚味も、イムジャ氷河湖の水深同様100m位あってもおかしくは無い。此の氷河帯の下流域がディンボチェ村だ。この村あたりでは氷河は水流となり、アマ ダブラムの山裾を蛇行しながら村の南をイムジャ・コーラとして奔る。河岸は薄い表土を持つ氷河台地で、地衣類・短草・灌木が台地を覆う。植生は此の地に生命をもたらし、人々の暮らしを支えている。
下図はイムジャ氷河の核心域のパノラマ図だ、6x4.5版を4画面配置して作成した。パノラマ図の下は、此の地に在る氷河の鳥瞰図で、G00gle Earthの衛星画像を立体化して作った。図から此の地が、ヌプツェ(7865m)、ローツェ(8516m)の南壁直下に在り、ヌプツェ氷河、ローツェ氷河からのモレーン(氷河堆積物)が幾重もの小山を造り、チュクンを囲んで居る様子がわかる。この小山群の奥には無数の小氷河湖があり、小氷河湖は不安定で、ヌプツェ氷河、ローツェ氷河からの雪崩の直撃による決壊の危機を孕んでいる。一見平穏な楽園風景は破壊の地獄を抱えている、之が山岳風景だ。雪崩の破壊力のすさまじさに付いては 「エヴェレストの大規模な雪崩・戦慄の現場捉えた(AFP通信カメラマン ロベルト・シュミット氏)」(click) にネパール大地震の時、エヴェレストBCで自ら体験した貴重な動画がUPされている。
工業製品に埋もれた消費社会とは距離を置いた、内陸アジアの自然と人間を紹介いたします。此処には、私たちの美意識の源泉・文化の源泉が数多く現存し、自分が知らない事に驚きます。此処には有史以前から今も変わらない人跡未踏の雪山や氷河、0m地帯の広大な砂漠や標高5000mの草原、アジアの大河の源、幾百千年来の隠れ里等など、枚挙に暇の無い非日常が今も生きています。大地と太陽・水と植物・自然の恵みを友に、人口エネルギー消費ゼロで暮らす人々も沢山います。この地域の総面積は日本の国土の20数倍・北米の面積にも相当し、此の地の地下資源を世界は注視してます。近い将来の「地下資源&エネルギー」枯渇時に、工業生産國は衰退・崩壊する「現代文明の病理」を背負ってますが、内陸アジアは背負ってません。この問題は最終章「黙示録」で考察してます。内陸アジアには持続可能な社会の雛型が有史前から連綿と続いています。 |