トクラ~ディンボチェの峠からの眺望は、眼下に、クーンブ氷河が造ったカール台地が広がり、開放感にみちていている。絵柄の撮影時は、台地が草紅葉で染まり、ヒマラヤの名峰を飾っていた。此処は光だけの時空のようだ。
エヴェレストからのクーンブ氷河はトクラの手前で水流となる。登山路をこの水流とは別にとり、東側の尾根を登るとディンボチェとの峠に到り、上図のパノラマ図の景色となる。峠からは東面・南面・西面の6座が一望出来る。峠を越えるとディンボチェの村に着く、パノラマ図左下に写るのがディンボチェの村だ。パノラマ図の上2点の写真は別の角度から撮影した峠の景観だ。更に下図は、パノラマ図中央部(石塔と山座19の間)崖下の景観で、絵柄の川沿いの耕作地と建物はぺリチェの村だ、ぺリチェの村には医療施設やヘリポートが整備されている。エヴェレスト街道では、ぺリチェ村が耕作限界と言われている。村の頭上に在る陽当たりの良い此の峠は、長閑な楽園だ。峠の中央部には石垣で造られたヤクの放牧地が点在し、放牧地ではヤクが日がな地に這う草を食んでいる。放牧地には石造り、スレート屋根の牧草小屋が並ぶ(下図2点)。ヒマラヤの放牧は、高山帯の自然破壊に直結する問題だ。 「ヒマラヤ高山帯の草地群落と放牧の影響(東京大学 高槻成紀氏)」 (click) には放牧の環境影響に付いて述べられている。
工業製品に埋もれた消費社会とは距離を置いた、内陸アジアの自然と人間を紹介いたします。此処には、私たちの美意識の源泉・文化の源泉が数多く現存し、自分が知らない事に驚きます。此処には有史以前から今も変わらない人跡未踏の雪山や氷河、0m地帯の広大な砂漠や標高5000mの草原、アジアの大河の源、幾百千年来の隠れ里等など、枚挙に暇の無い非日常が今も生きています。大地と太陽・水と植物・自然の恵みを友に、人口エネルギー消費ゼロで暮らす人々も沢山います。この地域の総面積は日本の国土の20数倍・北米の面積にも相当し、此の地の地下資源を世界は注視してます。近い将来の「地下資源&エネルギー」枯渇時に、工業生産國は衰退・崩壊する「現代文明の病理」を背負ってますが、内陸アジアは背負ってません。この問題は最終章「黙示録」で考察してます。内陸アジアには持続可能な社会の雛型が有史前から連綿と続いています。 |