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チベットのヒマラヤ:21

 上図3点は、下地図の右上黄色点線内のPK-6340の画像で、この山はサガ近郊を飾る独立峰だ。広々とした草原に堂堂の姿がひときわ目立つ。サガは国道219号がヤルンツァンポ河に合流する地点にあり、比較的大きな街だ。近郊には温泉も湧く。サガで219号と別れヤルンツァンポ河を渡りザラ峠を越えると、ペクツォ湖やジュガール・ヒマールが有るシシャパンマ自然区だ、その地理的様子を描いたのが下図だ、地図左のジュガール・ヒマラヤ側が南で、右のヤルンツァンポ河側が北になる。

 下図3点はジュガール・ヒマール北端のチヤルン・リ(6767m)だ。上図左の黄色点線が此の山の位置だ。ぺク・ツォ(湖)に近い為か、ガスに捲かれている事が多く、雨季はもとより乾季に於いても山は姿を見せない。

 

 下図はぺク・ツォ湖(湖面標高4600m)。この巨大湖はジュガール・ヒマール北東の山裾にあり、湖の周囲概略70Km圏の水が流れ込んでいる。ぺク・ツォ湖は紫外線にけぶる濃紺を、チベットの褐色の台地に横たえ、湖岸に高層湿原をつくり、原始植物を思わせる地衣類を繁茂させ、異界の景観を誇示している。チベットには湖が沢山有りその数は1500以上と言われるが、正確な数は誰にも分からない。チベットに湖が多い事には理由がある。此の地の南900kmにはベンガル湾が有る、強い太陽光はベンガル湾の海水を水蒸気に変え、北へ送る、北に並ぶ高峰群の壁は水蒸気を雪に変え、チベットに送る、之が淡水としてチベットの大地に蓄えられる。淡水の多くは永久凍土としてチベットの地下に蓄積し、一部は地上に露出して湖の姿となる。此の淡水がアジア大陸の生命の源泉と成っている。内陸アジアの植物の多様性もチベットの淡水が源だ。

 

 

 上図はヤルンツァンポ河畔に佇むサガの街並み。渡し舟で車ごと手前に渡る。河を渡ると異界を思わせる山岳地帯だ。ザラ峠を経て、ペクツォ湖上部の湖沼帯に至る、下図の5点はそこの景観だ。ペクツォ湖上部湖は標高4670m程でペクツォ湖より70m程高い位置にある。湖畔には遊牧民のテントが並び、タイムスリップしたかの様な景観が広がる。これ等の画像の下の6点目は、ペクツォ湖上部湖とペクツォ湖を結ぶ回廊だ。此のシリーズでは画質の悪い画像が混在する、初期のデジタル写真故だ、現場が困難な状況でフイルム撮影が出来ず、画像確保にデジタル機を用いた故だ、とは言え当時の高級機の部類だ。

 

 

 下図11点は上図とは反対側、ヤルンツァンポ河北側の景観だ。サガ~ラカ~ガガ間の国道219号とヤルンツァンポ河の間には様々な姿の高層湿原が展開する。植生も多様だ。植物達の姿には威厳を感じる。

 チベットは全域が命を支える淡水の塊であり水瓶だ、其れも世界最大の淡水瓶だ、北極・南極も淡水塊であるが生活圏外だ。話は飛ぶ、チベットと言う水瓶が今脅かされている、チベットの豊富な鉱物資源の採掘は中国の近代化を支えているが、採掘には大量の水を使い環境汚染を伴う、何より消費社会にチベットが組み込まれ大気汚染・水汚染は加速化している、此の実態をチベットの人々にどれ程知らされているのだろうか、勿論我々も知らない。太古からのチベットの自然は人類の財産だ、今之を守る叡智が求められている。

 

工業製品に埋もれた消費社会とは距離を置いた、内陸アジアの自然と人間を紹介いたします。此処には、私たちの美意識の源泉・文化の源泉が数多く現存し、自分が知らない事に驚きます。此処には有史以前から今も変わらない人跡未踏の雪山や氷河、0m地帯の広大な砂漠や標高5000mの草原、アジアの大河の源、幾百千年来の隠れ里等など、枚挙に暇の無い非日常が今も生きています。大地と太陽・水と植物・自然の恵みを友に、人口エネルギー消費ゼロで暮らす人々も沢山います。この地域の総面積は日本の国土の20数倍・北米の面積にも相当し、此の地の地下資源を世界は注視してます。近い将来の「地下資源&エネルギー」枯渇時に、工業生産國は衰退・崩壊する「現代文明の病理」を背負ってますが、内陸アジアは背負ってません。この問題は最終章「黙示録」で考察してます。内陸アジアには持続可能な社会の雛型が有史前から連綿と続いています。
 

 
 
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