「チベットの民話」フレデリック&オードリー・ハイド チェーンバース*編 中島健*訳 ①:序言ある古代の詩ではチベットを「雪を頂く高い山々の中心、大河の源、高地の国、清らかな土地」と述べている。これは正確な言葉である。すなわち、チベットの平均海抜は一六、〇〇〇フィートで、この地方は世界の最高の山脈、北はコソロソ山脈、西はカラコルム山脈とラダク山脈、南と東はヒマラヤ山脈-に取り巻かれている。水はチベットの太古の氷河から流れ、インダス川、サトレジ川、ブラマプトラ川、サルウィン川、メコン川、揚子江となる。 チベットは古代文明が最後に残された地であり、古代エジプト、ペルシア、インドの消滅と共に消えたと信じられていた文明の多くのものの貯蔵庫であった。この「雪の国」は、世界でもっとも宗教的な国と呼ばれ、この世に住む聖者たちの国だとする人々もいれば、また迷信に押し拉がれた国だとする人々もいる。どちらの見解もまったくその通りだとはいえない。つまりチベットは、社会の指導原理が精神的価値であるために特異な国であった。チベット人はそうした価値の重要性を広く認めていて、ここに集めた物語が実証しているように、そうした価 値が生活のあらゆる局面に浸透していた。 けれども精神面の卓越性はチベット大特有のユーモアのセンスと通商好みによってバランスが保たれていた。チベット大は生来の商人であるように見える。彼らの交易を求める旅はマルコーポーロの旅に匹敵する。ユーモアのセンスは、とりわけ真剣に精神生活に取り組む人々にはっきりと見て取れ、それは、ひどく苦い思いを残す可能性の高い経験に冗談を飛ばしながらこの上なく苦しい逃亡の物語を語ることの多い、チベットの避難民と仕事をしたことのある西欧大によって、広く認められている。②:一九五九年、民族的な蜂起が中国によって押し潰されたとき、自由チベットのは消え失せた。その結果、ダライーラマ(チベットの精神的なまた現世の指導者)を含め多数のチベット大がインドへと驚くべき逃避行を行なった。現在十万人のチベット人の脱出者がインド、ネパール、ブータンに残っている。脱出者たちは、新しい環境に適応しながら、また、彼らの従来からの伝統を保存するだけでなくそうした暮らしを続けようとしてきた。しかしその多くが消え去るのは避けられない。チベットでは語りが家族の楽しみのもっとも人気のある形態の一つであった。そしてすぐれた語り部の需要は大きかった。あるチベット人が編者に語ったところによれば、「語りは私たちのテレビだった」と言う。それゆえ、編者もまた、チベットの豊かな文化の一端を紹介しながら、読者にこうした神話や物語を楽しんでいただきたいと願っている。チベットの民話のほとんどのものはチベットを舞台にしている。そのため語り手は多くの部分を聴衆の想像に委ねることが可能である。編者は物語のなかでチベット特有の背景を補足しようと努めた。チベットの風習に関するさらに立ち大った説明は註にある。ゲサルの叙事詩〔『リソのゲサル』参照一に述べているような空想的な出来事に対するチベット人の態度のために、彼らが愚鈍だと思う読者もいる。チベット人の側では、私たち西欧大がこの日常的世界を不変の現実だと全面的に確信できるのにたいへん驚く。とりわけ一人として同一物を同様に見ることができない場合には。チベットの仏教哲学では、現実のとらえ方を夢をすべて信じる睡眠中の大にたとえる。この見方は、従来、般若経にある次のような言葉で説明されている。③:すべての生み出された形あるものは蜃気楼に、空の雲に、夢にでてくる姿に似ている。このようにすべてのものを見なければならぬ。 ポタラ宮殿 ①ポタラ宮(ポタラきゅう、 ワイリー方式:pho brang Potala、中国語: 布達拉宮)は1642年チベット政府「ガンデンポタン」の成立後、その本拠地としてチベットの中心地ラサのマルポリの丘の上に十数年をかけて建設された宮殿。世界遺産ラサのポタラ宮の歴史的遺跡群を構成する一つ。中国の5A級観光地(2013年認定)でもある。②13階建て、基部からの総高117m、全長約400m、建築面積にして1万3000㎡という、単体としては世界でも最大級の建築物。チベット仏教及びチベット在来政権の中心であり、内部に数多くの壁画、霊塔、彫刻、塑像を持つチベット芸術の宝庫でもある。ポタラの名は観音菩薩の住むとされる補陀落のサンスクリット語名「ポータラカ」に由来する。③標高3,700mに位置し、7世紀半ばにチベットを統一した吐蕃第33代のソンツェン・ガンポがマルポリの丘に築いた宮殿の遺跡をダライ・ラマ5世が増補、拡充するかたちで建設された。5世が自らの政権の権威確立を象徴するために着工したものと言われる。内部の部屋数は2000ともいわれ、ダライ・ラマ14世も自伝の中で、いくつ部屋があるのか分からなかったと記しているが、上層に位置する中核の部分は、政治的空間の白宮と宗教的空間の紅宮と呼ばれる2つの領域に大きく分けることが出来る。聖俗両権を掌握するダライ・ラマ政権の「神聖王権」的性格を具現化したものとる言える。現在中国で発行の50元紙幣の裏面の図柄にも採用されている。
工業製品に埋もれた消費社会とは距離を置いた、内陸アジアの自然と人間を紹介いたします。此処には、私たちの美意識の源泉・文化の源泉が数多く現存し、自分が知らない事に驚きます。此処には有史以前から今も変わらない人跡未踏の雪山や氷河、0m地帯の広大な砂漠や標高5000mの草原、アジアの大河の源、幾百千年来の隠れ里等など、枚挙に暇の無い非日常が今も生きています。大地と太陽・水と植物・自然の恵みを友に、人口エネルギー消費ゼロで暮らす人々も沢山います。この地域の総面積は日本の国土の20数倍・北米の面積にも相当し、此の地の地下資源を世界は注視してます。近い将来の「地下資源&エネルギー」枯渇時に、工業生産國は衰退・崩壊する「現代文明の病理」を背負ってますが、内陸アジアは背負っていません。でした。今は状況が変化してます。この問題を4章「黙示録」で考察してます。21世紀以降の急速なグローバル化(市場経済化&軍事化)は環境破壊と共に、この地にも押し寄せてます。 |