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内陸アジアの貌

ランタン谷:3

山岳に生きる人々は、時空を超越し平穏に生きているかに思える。唯一畏れるものは自然であり、白銀の山に姿を変え頭上う覆う神々なのだろう。神々は時には花に姿を変え、時には風となり慈雨となり、糧を生む台地となり人々に慈悲注ぐ、その様に、此の地に生きる人々は思っているのかも知れない。人々には石の家に隠れる以外自然の猛威からの自衛手段は無い、唯一の積極策はマントラのオン・マニ・ぺメ・フムを唱え、身の回りの結界のバリアーで、神からの在らぬ叱責から身を守るしか無い。上図は落石の大きなのが一つ降って来るだけで、村は壊滅する程に危険な位置で暮らす様子だ。其れでも村人は此の地で生きる、天を信じているからであろう。信頼は2015年4月25日を境に「信頼をしていた」の過去形に変わった。

 

山裾に在る天然の冷蔵庫で造る「チーズ工場」だ。ランタン谷のチーズは有名だ。近くには、チーズの為の小型飛行機用の滑走路もある。高所・寒冷の地に生きるヤクの乳によるチーズで味も臭いも辛みも総てが強烈で、強い酒と合う。其の為の酒を持ち山に入る,相性が良いブランデーのレミーマルタン、ウィスキーのヘネシーを持参する。現地の古酒は強過ぎて手に負えない。同じチーズも下界では此処での味は出ない。味とは舌だけが感じるものでは無い事を実感させてくれるランタン谷だ。

チーズ工場内部の様子

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上図はヤクを解体し野良で日干しの作業をする家族の姿、石楠花の大輪が添えられている、命への儀式と理解した。初夏の強い日射しと乾燥した大気が保存食を作る。冷蔵庫の有る世界とは違い、太陽光が動物性蛋白質の保存食品を生む。干し肉は塩を付け生でかじる、携行食品でも有る。我々が真似して生で食べれば即座に激しい腹痛と下痢に見舞われる。干し肉は現地の病原菌の住処でもある、それも文化の一つだ。或いは菌が肉を守り、此の地の回路と成っているのかも知れない。下痢は門外漢へのメッセージだ。メッセージに対応出来る体力作りも撮影条件の一つだ。山岳写真は、環境への理解と同化が撮影を創る。機材や技術は2次的なものだ。環境への愛情が、見える眼と撮れる身体をつくる。更に距離感は絶対要件だ、之が肝心だ。

 

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春から初夏への季節を迎え畑の手入れの時期だ。日がな雑草を摘み小石を取り除き薄い表土を丹念に鋤いてゆく。標高が3800m前後の此の地では育つ作物はごく限られ、小粒のジャガイモと蕎麦位だ。表土に満遍なく散らばる小石は、山からの落石だろう。雪の季節に運ばれて来るのか、可成りの量だ。

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石に刻まれた文字は「オン・マニ・ぺメ・フム」の真言だ。ランタン谷の道筋で数多く見かける光景で、日常に溶け込み、山岳と生命と真言が一体となり此の地を天界への回廊としている。今は天界に消え、此の風景は永遠に見る事は出来ない。
 

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山肌を万遍無く石楠花が飾る。ランタン・コーラ沿いの南向き斜面はこの時期花盛りだ。開けた谷沿いの南斜面は広葉樹の格好の住処だ。谷を挟み対岸は北斜面となり、針葉樹の住処で、こちらは花の無い対極的な景色で、緑一色の世界だ。南向き斜面は崩壊台地でも有り、にぎやかでは有るが不安定な世界の様だ。
 

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穏やかなランタン谷の光景を並べると一幅の絵巻物に成る、時空を超越した桃源郷の絵巻物だ。下界に生還した旅人の話が夢を膨らませ、山奥に仙界が有ると物語り、桃源郷伝説を創ったとすれば、まさに此の地こそが過って旅人が迷い込んだ地に相応しい。其の旅人が生きながらえ再び此の地を訪れたら何と思うだろう。此の地は真の仙界に消えた。2015年4月25日一瞬にして消え仙界に旅立ってしまったのだ。南無。桃源郷とは生死一体の地を指すのかも知れない。
 

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爛漫の石楠花の古木が繁茂するゴラタベラからランタン村へ至るランタン・コーラ沿いの南斜面、標高は3700m。桃源郷を彷彿させる穏やかな環境が辺りを包む。母は歌を口ずさみ、幼な子は棒を振り振り右え左えと飛び回る。風の無い午後、陽射しが眩しい。所が、ものの30分で空は急変だ、雷鳴が地面をゆすり、ヒョウが降り、暗闇が辺りを包み、雨が降り、雪も降る急変ぶりだ。景色に似合わず気象は凶暴だ。この凶暴で暴力的な気象が神々しい姿に山を化粧する。矛盾に満ちた世界だ。この矛盾こそが桃源郷の条件だ。

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下図:ランタン・コーラ(谷)上流域  ランタン谷は、ネパール中部でチベットとの国境付近のラスワ郡に属している。ネパールの首都カトマンズの北方に位置し、この谷も含めて周辺地域は同国によってランタン国立公園に指定されている。この谷は春はシャクナゲ、夏は高山植物を鑑賞しながらのトレッカーでにぎわう。ヒマラヤ山脈の高峰に近いので、晴れていれば、例えばランタン国立公園内における最高峰であるランタン・リルンをはじめとしたヒマラヤ山脈の山並みを見ることができる。他にも、ランタン・リルンの斜面を流れているリルン氷河も見ることができる。また仏教寺院のキャンジンゴンパもある。この他、ランタン谷の南部には、ヒンドゥー教の聖地であるゴサイクンダも存在する。 出典:click

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ランタン・コーラ沿いに繫茂するヒマラヤスギ(ヒマラヤ杉)。学名: Cedrus deodara)は、マツ科ヒマラヤスギ属の常緑針葉樹。ヒマラヤ山脈西部からアフガニスタンの標高1500メートル (m) から3200 mの地域が原産地である。世界的に広く知られるようになったのは、この地域に最も早く入った英国人によるもので、日本に入ったのは1879年(明治12年)にカルカッタ経由で英国人が種子を入れたのが最初とされる。形態は生態常緑針葉樹の高木。原産地では、高さは50 mほど、幹の直径は3 mに達する。樹冠は美しい端正な円錐形で、地面に水平な枝となだらかに垂れ下がった小枝があり、下枝はほとんど地面に達する。樹皮は灰黒色で、縦や網目状に細かく割れる。枝は長柄と短枝があり、雄花と雌花の冬芽は、短枝の先につく。葉のつけ根に葉芽がつき、褐色の鱗芽で包まれている。  出典:click
 

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ランシサカルカ幕営地の朝。夜半の雪が薄く台地をおおい寒々とした光景だ。左側はランシサ・リ(6427m)の山裾は未だ薄い雪雲を着ている。絵柄の正面中央はGanchenpo (ガンチェンポ)6387m。 陽が出ると景色は一変する、低緯度の此の地の太陽光は強烈で、無彩色の世界が極彩色に変わる。
 

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幕営地での夕食後の一時、暖を取りながら会話が弾む。

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上図、下図はナヤカンガの夜明け。幾重もの稜線の奥に鎮座する此の山は、蓮台に座る如来の様だ。ランタン村を守護するかの様に、村を正面から見据える。暗闇の中では月光の浮かび、月の無い夜は夜光に浮き、村を見つめている。この朝は夜来の雪が上がり、更に一層清々しい。

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上2点:Naya Kang(ナヤカンガ)5846mLangshishs   ランタン谷を挟んで此の地の主峰ランタン・リルンに対峙するのが、このナヤカンガだ。幾重もの前衛山稜の奥に主峰がある、画面に雪壁を見せるのが主峰だ。主稜線は東西に長く、極めて大きな山体だ。東のコルには南へ抜けるGanja La峠が有る。
 

下図はLangtang Lirung(ランタン・リルン)7245m。ランタン・ヒマールの主峰だ。ランタン村の手前のゴラタベラからの眺め、巨体が神々しい。前衛の尾根が邪魔だがランタン村からも同様だ。山体を石楠花と一緒に撮影出来るのは此の山がランタン谷から立ち上がるからだ。山の純白は標高がひときわ高い事を意味する。別名はガンチェン・レドルブGanchen Ledrub、山名の語尾に付くリルンはチベット語の「Lirup」からのもので「大きい」を意味する。「ランタン谷の大きな雪山」となる。烈風が純白の巨体から雪煙を舞い上げている、名前の通り大きな雪山だ。
 

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上図/下図のウルキルマンは幕営地ランシサカルカの南正面を飾る。この山は均整の取れた鋭い姿で氷河の中に屹立し、ひときわ目を惹く山だ。ウルキルマンの稜線の東にはカンシュウム峰が、西にはガンチェンポ峰が続き、足下にはランシサ氷河が奔る。土地の人々は此の山をチベット語でシャール・カルマ(Shar Karma)と呼んでいる、「東方の星」を意味するそうだ。此の山の初登頂は1964年に大阪市立大学隊がなした。その後、登頂禁止が続き、30年後の1994年に阪大山の会隊の登頂成功が、ネパール政府の許可が取れた2登目となる。しかし禁止の30年間にも米・西欧隊に依る無許可登山がなされていた様だ、之は現地に対する蔑視なのか無視なのか悲しい話だ。

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